日常にありふれた成分であるキシリトール。
人間が摂取してももちろん安全ですが、
犬では重度の毒性が出てしまうことが近年世界中で報告されているのをご存知でしょうか?
yahoo知恵袋などでも活発に意見交換がされていますね。
臨床経験12年の獣医師である私が犬がキシリトールを食べてしまった場合に起きうる中毒症状とその対処方法をまとめて解説していきます。初耳の飼い主さんもすでにご存じの飼い主さんも、改めて危険性を認識していただければ幸いです。
- キシリトール中毒は低血糖症に準じた症状を呈する
- より大量に摂取した場合は低血糖症に加えて肝不全が起きる
- キシリトールを誤食したことが確実な場合や少しでも疑わしい場合には速やかに動物病院を受診する
こんな症状がでます
食べた後30分くらいから嘔吐が見られます。
その後、低血糖の症状として沈鬱、刺激に対する反応性の低下、運動失調、発作などが観察されることがあります。
急性肝不全の症状は見た目では判断しにくいことが多いです。動物病院を受診し血液検査で肝酵素の上昇などが認められるときは肝細胞に大きな負担がかかっていることが考えられます。
対処法・治療法
キシリトールの誤食直後の場合は催吐処置(わざと嘔吐させる処置)を実施して体に吸収させないようにすることが大切です。ほんの少し「舐めた」程度であれば重度に症状がでる可能性は低いと考えられますが上記のような変化が少しでも見受けられるようでしたら様子を見すぎることなく病院へ向かいましょう。
血液検査で低血糖が判明したのであれば、口から砂糖を舐めさせたりグルコースを含んだ輸液剤を使って点滴をすることで改善を目指します。
肝毒性のリスクがある場合は肝臓保護薬の早期投与と点滴が効果的です。
これら一連の症状や検査所見はかなり時間が経ってから発現してくることも多いためしばらくは入院させたり連日通院して各種治療を継続したほうが良いでしょう。症状の軽快と血液検査の正常化を確認できたら治療終了です。
キシリトール中毒が起こる理由
キシリトール(代用甘味料)とは砂糖不使用の飴やガム、歯磨き粉などに含まれる糖アルコール。
低血糖が起こる機序(メカニズム)としては、キシリトール摂取時のインスリン(血糖値を下げる働きを持つホルモン)の分泌量がグルコースと比較して2.5~7倍になることが原因と考えられています。
急性肝不全に関してはキシリトール摂取後に肝内代謝経路が機能不全を起こして肝細胞が壊死してしまうことと、活性酸素が肝臓を障害してしまう2つの要因が有力視されています。
結論
人間用のキシリトール含有食品が多様になるにつれて犬の誤食事故が増加しています。「玉ねぎ類やチョコレートが犬はNG」ということは大分浸透してきた感触がありますがまだまだ日常の中には落とし穴があります。注意して生活させてあげましょう。
ほとんどのキシリトール製品には「犬がキシリトールを摂取した場合の危険性」は記されていません。さらに、明確な中毒量が計算しにくいので、どれだけ摂取したら最悪死亡してしまうのか、それとも死なないのかが定量的に判断できません。口に入れさせない注意をすることが重要です。
猫にも摂取させないほうが良いでしょう。
獣医師による啓発や指導、飼い主さん同士の情報共有が大きな事故を防ぐためには必要であると考えています。