フルーツの「葡萄(ブドウ)」―――
あまり馴染みがないかも知れませんが、犬猫はぶどうが食べられません。
明確な理由はまだ判明していませんがここ10年くらいで中毒を起こしたという報告が増加しています。
日常生活のなかでペットが食べられない食品は意外と多く存在するんですね。
注意喚起のために、ぶどうを誤食した場合に「どんな症状が出るのか」「すばやく対応するには」「効果的な対処法・治療法」を獣医師である私が解説します。
- 犬猫は中毒が出るのでブドウが食べられない
- 誤って食べると消化器症状や急性腎不全症状が出る可能性あり
- もしもの時は速やかに動物病院を受診しよう
- どんな治療が適応されるか
犬猫はブドウが食べられない
チョコレートや玉ねぎ類・キシリトールは犬や猫などのペットに食べさせてはいけない食物の代表選手であることは飼い主さんなら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
さらに近年、ブドウやレーズンを食べたペットが嘔吐や下痢などの消化器症状や腎機能が急激にダウンしてしまう急性腎不全に陥ったという報告が世界中でされるようになりました。
我々獣医師の間でもここ数年で実際の症例として診察する機会が増えてきているように感じます。
さらにさらに怖いのがブドウの中にあるどの成分が犬に悪影響を及ぼし、なぜこうした症状を出す原因となっているのかが詳細に判明していないことなのです。
誤って食べると消化器症状や急性腎不全症状が出る可能性あり
ブドウの毒性はチョコレートや玉ねぎよりも強く、重度に中毒症状を発症してしまうと最悪は死亡する可能性が高いと言われています。
ブドウを摂取したと2~3時間で嘔吐や下痢、それから少し遅れて5時間ほどで腎不全の症状が出ると言われています。重度の場合は元気消失や低体温などが伴うことがあります。
もしもの時は速やかに動物病院を受診しよう
食卓にぶどうやぶどうを使用した食品が登ることも多くなってくると思います。
うっかりと実が食べられないようにするのは基本ですが、食べ終わったあとの皮や種・お皿に残った果汁にも要注意です。
(指や口についた果汁もペロペロされないように!)
さらにはブドウの加工品である「レーズン」を使用した食べ物(ex:レーズンパン)やワイン関連の製品にも気を付けましょう。特にレーズンは栄養素などが凝縮しているので毒性も同時に強くなっている可能性があります。より少量の摂取でも症状が出やすいと言えますね。
もしも目の前でブドウを食べる瞬間を目撃した場合や、見てはいなかったけれども誤食したことが明らかな場合はできるだけ速やかに動物病院を受診しましょう。
どんな治療が適応されるか
催吐処置
まずは毒性物質が胃や腸から吸収される前に吐かせてしまうことです。催吐処置と言ってあえて嘔吐させることで胃の内容物ごとブドウを体外に排出させます。ブドウの誤食から経過時間が短いほど有効です。
点滴
ブドウの毒性で一番怖いのは急性腎不全に陥ることです。腎機能に影響が出ているかどうかは血液検査をすれば分かりますが、完全に腎機能がダウンしてしまうと尿が生成されなくなり血液中の老廃物が蓄積して死にいたることもあります。
それを阻止するためにはなるべく点滴をして腎臓を保護して機能低下を防ぐことが重要です。点滴は連日実施されることもしばしばです。
整腸剤や吐き気止めのお薬など
下痢や嘔吐が見られる場合にはそれらに対応した薬で症状を抑えていく対症療法が取られることが多いです。獣医によってや予防的にこれらの薬を出すこともあるでしょう。
指示をよく聞いて投薬してくださいね。
まとめ
「ブドウ○○gから症状がでる~」とか「〇粒からは危険です~」とか一概に言えないことが怖い所かもしれません。
「一粒なら大丈夫!」とは決して言いきれません。
そもそも、ぶどうがダメな理由も判明していませんし…。
最も大切なのは飼い主さん一人ひとりが「犬にブドウはNGなんだ!」という認識をもっていただき、絶対に誤食させない環境作りをすることだと思います。
それでももし万が一の場合はすぐ獣医にご相談くださいね。