ペットも季節の変わり目には食欲が低下したり何となく元気がなくなったりする子がいます。そんな中、猫ちゃんの「猫風邪(ねこかぜ)」をまとめます。
「猫風邪(ネコカゼ、猫カゼ)ってよく聞くけど原因は?」「子猫にも感染するの?」「初期症状は?」「寒さが関係しているの?」や「治療法はどんな風に?」など飼い主さんの疑問に獣医師である私が責任を持ってお答えします。
- 顔周りを中心に多様な症状を呈することが特徴
- 診断は比較的簡単
- 治療は抗生剤がメイン。重症度に合わせて抗ウィルス薬が併用される。
- 一旦回復しても、ぶり返す(再発すること)可能性が高い
- しっかり栄養を摂ってストレスなく生活させ、定期的にワクチン接種することで発症を予防することができる
特徴的な症状
初期には沈鬱(元気がない)、くしゃみ、食欲不振、発熱、目やに、鼻汁、歯茎が真っ赤になるなどの口内炎、結膜炎などが猫風邪の症状です。
これらの症状が多ければ多いほど、酷ければ酷いほど「重度の猫風邪」と判断できます。また単一の症状であっても放置してしまうと生涯完治しない持病へと進行してしまう可能性がありますので早めに動物医療を受診しましょう。
治療方法はおおまかに3つ
抗生物質
猫風邪の主な原因はウィルスですが、細菌が二次的に感染することで症状の悪化がすることがあります。
それを予防・治療するために広域スペクトラム(幅広い種類の最近に効果がある)の抗菌剤の投与が有効です。
投与方法も様々あり、目に症状が限局しているようなら点眼薬のみだったり、目やにも鼻汁もくしゃみも伴うような重度の場合は内服薬の全身投与が選択されます。
抗ウィルス薬
ヘルペスウィルスに対しては全身的な抗ウィルス薬の投与が行われることがあります。
アシクロビル、ファムシクロビルといった薬の経口投与が有効であったという報告があります。
支持療法
発症猫は鼻が詰まっていたり、口の中に潰瘍ができていたり、そもそも元気がなかったりして食欲が低下していることがあります。
そのため食事のアシストが必要になります。スポイトなどを用いて流動食をゆっくりと口に流し込んで与えてあげましょう。飲水に関しても同様です。
猫風邪は主に子猫がかかりやすい病気です。
体力のない子猫が食欲を失ってしまうと衰弱に加速が付きやすく残念な結果になってしまった経験もあります…。支持療法(食事アシスト)はとても重要なんです。
原因として考えられるもの
猫の上部気道感染症(いわゆる猫の風邪)の原因はウィルス、細菌、クラミジアなど色々な微生物の感染による疾患と考えられています。なかでも特に猫ヘルペスウイルスと猫カリシウィルスの関与が大きく、ペットショップやブリーダーなど多頭飼育環境下にある猫での感染・発症リスクが高い。
これらの病原性微生物の主な感染経路は経口、経鼻、経結膜(目の粘膜)です。鼻汁や眼脂(目ヤニ)などの分泌物に含まれる大量の微生物を、他の猫が口や鼻、目の粘膜を介して体に取り込むことで感染が成立します。
診断は比較的簡単です
診断は専ら診察した獣医が臨床症状から推測することがほとんどです。
くしゃみ・鼻汁・目ヤニ・眼の充血など特徴的な症状がいくつか合致するようでしたら猫風邪を疑診して各種対応に入ります。
【重要】予防するには
ヘルペスウィルス・カリシウィルスの両ウィルス感染症に対するワクチンが利用可能です。
いわゆる3種混合や5種混合ワクチンなど日本で流通しているワクチンのすべてには予防効果が備わっています。
定期的にワクチンを接種してあげることでこれら感染症に対する抗体を高く維持し発症を予防することが大切です。
自宅でできる日ごろのケアとしては、しっかりとフードを与えて体力をつけること、ストレスの少ない生活環境を整えてあげることなどが挙げられます。
上記のワクチンや日常ケアのバランスが崩れてしまうと簡単に何度でも再発してしまう可能性がある怖い病気であります。