近年、人と同様に犬も高齢化が進んでいます。
実は高齢の犬の多くが関節炎を患っていますが、初期の段階では明確な症状をあまり見せてくれないので高齢な事と相まって見逃されていることも少なくありません。
関節炎が進行すると歩行や活動性に支障を来しQOL(Quality Of Life =生活の質)が低下するため早期発見・早期治療が望まれます。
実際に動物を治療して12年になる獣医師の私が、「こんな症状でていませんか?」から、サプリメントを中心とした効果的な対応まで解説します。
こんな症状は関節炎に特徴的
- 朝一番の動きの「ぎこちなさ」
- 座った姿勢から立ち上がる事が困難
- 走る・ジャンプする・階段を上るなどの動作が以前より鈍い
- 歩くスピードが遅くなった
- 痛がる
このような変化がある場合には関節炎を疑って差し支えないでしょう
診断と治療どうしたらいいの?
関節炎は一度発症してしまうとそこからは徐々に進行していきます。
重要なポイントは早期発見・早期治療をいかにスムーズに行い、関節炎の進行を抑えてあげるかにかかっていると言ってもよいでしょう。
- 愛犬の些細な行動の変化に飼い主さんがいち早く気づいてあげること
- 動物病院を受診して適切に診断を受けること
- 状況に応じた治療を選択すること
- 体重過多に注意(肥満解消)
- 運動のさせ過ぎにも注意
動物病院で関節炎と診断された後は症状に応じた対応が必要になってきます。
サプリメント
様々な有効成分を適切に配合したサプリメントは関節炎の長期コントロールにはとても重要です。
ω脂肪酸やグルコサミン・コンドロイチンなど抗炎症作用・軟骨修復作用がある成分がきちんと含有し、なおかつ食べやすい味付けや形状のものを与えるようにしたいですね。
サプリメントは一生涯の投薬が推奨されますので食事に混ぜて与えたり、おやつ感覚で愛犬と楽しみながら食べさせてあげるとよいでしょう
おすすめのサプリメントは以下の2種類です
どちらに優劣があるわけではりません。
大きく違うのは形状がソフトカプセル状だったりオヤツに近い作りだったりする点です。モエギキャップは猫にも使用することができます。ちなみにイクラみたいな味がします。
愛犬の好みと相談してより長期に続けられる製品を選ぶことが重要です。
消炎鎮痛剤(痛み止め)
重度の関節炎がある場合、歩き方の異常だけに留まらず「痛み」を訴えることがあります。突然「キャンっ!」と悲鳴を上げたり、足を上げっぱなしにしたり、患部に触られることを極端に嫌がったりするときは痛みを感じてる可能性が高いので痛みに対する治療が必要になります。痛めた直後は注射が選択されることもしばしばあります。
消炎鎮痛剤とは人でいうバファリンやロキソニンに代表される痛み止め薬です。
人用に販売・処方されている薬は犬にとっては強力すぎるので必ず動物病院で処方された動物用消炎鎮痛剤を用法用量を遵守して投薬するようにしましょう!
良心的な動物病院ですと胃が荒れたりする副作用の予防も考慮して胃薬を同時に処方してくれますよ
痛みが続いているうちはしばらく連用する必要があります。
また、どんなにうまく関節炎をコントロールしていても突発的に痛がってしまうこともあるのでその際は頓服として服用するのも効果的。
一番の原因は何なのか
加齢そのものが関節炎のリスクを高めていますが、それに加えて肥満や過度の運動も関節炎を助長する要因になっていると言われています。
- 若いころからの生活習慣により肥満傾向のある犬は関節に荷重が強くかかり続けるため、肥満でない犬よりも早く・重度に関節軟骨の摩耗が起きることにより痛みを伴う関節炎が進行する。
- また、高い運動の量や質を要求される犬種(ボーダーコリーetc)も繰り返しの関節使用により若齢のうちから関節に負担がかかる場合がある。
結論
犬の平均寿命は年々伸び、高齢化はこれからもどんどん進んでいくでしょう。
そんな中、高齢のペットが持つ運動器疾患に対する関心が高まりつつあるのが現状です。
動物の関節炎の多くは症状が分かりづらいため軽視される傾向にありましたが、飼い主さん一人ひとりが「この子の関節は大丈夫かな?」と意識しながら飼育していただくことで運動器疾患の早期発見・早期治療につながるものと思います。さらに、ペットの健康を気遣うことでひいては飼い主さんご自身の健康増進にも繋がると私は確信しています。
愛犬と共に1日でも長く健康的に生活したいものですね。